媒介契約入門編

不動産の購入、売却について。
聞きなれない言葉でもある不動産業者との『媒介契約』
性質を理解して満足できる不動産取引をしましょう。

この記事はぶっちゃけこの後に書きたかった『不動産媒介契約についてのホンネ(仮)』
が書きたいがために書いた記事なので、十分理解している方は退屈かもしれません。

この記事では

  • 媒介契約とは何なのか?
  • 媒介契約の種類とメリット・デメリット

といったことを解説していきます。早速どうぞ!

媒介契約とは

不動産とは高額な取引が一般的ですので、しっかり取り決めが必要です。
媒介契約は不動産を売る(買う)ために『事前に』契約を行い
何をするか、違約するとどうなるか、報酬はどうするか、などを取り決めます。

不動産を売却するにあたって!大まかにですが以下の手順となります。

<span class="fz-12px">Saeki</span>
Saeki

ざっくり説明すると

左のように進みます。

① 売却相談をする

② 媒介契約を結ぶ

(売却活動スタート!)

③ 購入者が申し込む

④ 売買契約をする

上記の ② 『依頼・契約』の契約に当たるものが媒介契約です。
同時にこれが完了して初めて売却活動が開始されます。

ちなみにどこにでもイレギュラーはあるもので、この媒介契約についても同じです。
どういうことかというと、媒介契約を結ばずに売却活動を開始する場合もあります。
昔ながらの不動産屋だと、依頼された後に特に手続きなどは無く
お客様が見つかってすぐ契約。といった流れになったりもします。

不動産屋はなぁなぁで済ませ、依頼主は知識不足で進行していきます。
基本的にはそのまま特に問題は起こらず売却が完了したりします。

ただ、基本的に「何かあったときの契約書」なので
その「何かあった」時には大いにもめると思います。

媒介契約の種類

ちょっと脱線しかけましたね。話を戻しましょう。
媒介契約には3種類あります。(カッコ内は略称)

  • 一般媒介契約(一般)
  • 専任媒介契約(専任)
  • 専属専任媒介契約(専属)

下に行けば行くほど縛りが強く強力な契約となります。
不動産屋は一般よりは専任、専任よりは専属を契約したいと思っています。
違いを表にまとめてみました。

一般媒介契約専任媒介契約専属専任媒介契約
他の不動産屋への依頼××
報告の頻度なし1回/2週間1回/1週間
契約期間なし3ヶ月以内3ヶ月以内
売主の直接契約×

それぞれの契約、メリットとデメリット、どんな方におススメかを解説していきます。

一般媒介契約

まず一般媒介契約ですが3つの中で一番責任と縛りが軽い契約と言えます。
報告義務も無く、契約期間もない(基本的には3ヶ月を推奨している)ので
とりあえず頼んでおく、みたいな感覚でしょうか。もし売却したい人も

『とりあえず急ぎじゃないから』と考えて『出さないよりは出しとく方がましか』

ぐらいの気構えならいいでしょう。

また”複数の業者に依頼できる”というのもポイントです。

一般媒介契約のメリット・デメリット

一般媒介契約のメリットは何と言っても『他の不動産屋に依頼が可能』です。
これはメリットでもありデメリットでもあります。

メリット
  • 色々な不動産屋さんが紹介してくれるので競争してくれる
  • はずれ(あまり積極的に動いてくれない)の不動産屋に当ってもリカバリーできる

とくに1つ目が大きいですよね。受け入れる間口が広ければそれだけ接するお客様も
増えてきますから。はずれの不動産屋は、残念ながらいると思います。厳密には

”その分野は得意じゃない”といった方がいいでしょうか。

例えば私のもとに”東京のマンションを売ってほしい”という一般媒介の依頼が来たとすると
案内もできないし、相場も分からないし、市場状況も分からない。
そこに広告費はかけたくないですよね。おそらく乗り気ではないです。

少しデメリットが今垣間見えたのですが、デメリットも挙げておきましょう。

デメリット
  • 不動産屋はやる気が出ない
  • 物件の管理が面倒

不動産屋さんは基本的に成功報酬です。契約を成立させる、
あるいは決済を成立させれば報酬を受け取ることができます。

一般媒介契約の場合、自社でせっせと広告を出している際に他の業者で契約成立してしまうと
今までの苦労が水の泡です。集客という意味では良いんですがね。

先ほどの私の東京のマンションの例で行くと

『せっかくうちが広告出したとしても、他の業者がその間に決めてしまうよ』

となってしまう。集客もままならないので完全にあきらめムードです。
大手業者ならまだしも中小企業となるとますますやる気をなくしていきそうです。
かけられる広告費用も違いますからね。

そして意外と挙げられないのですが”管理が面倒”。これも意外と重要。

例えばA社が”契約成立しました”となった場合、一緒に申し込んでたB,C,D,E社にも連絡
しないといけません。忘れて後にC社から”契約成立しました!”と連絡が来た日には…(´Д`)

同じことは価格の変更や現地の管理にも言えます。例えば近隣で不動産営業に関する
クレームがあれば全業者に連絡しないといけませんし、マンションの計画停電があれば
これまた全業者に伝えたほうが良いでしょう。自身が忙しい立場なら連絡がつかない間に
ことが進んで大失態。といったパターンもあり得ますので、きちんと管理しましょう。

こんな人、こんな物件におススメ

一般媒介契約の特徴である『他の不動産屋に依頼できる
これを切り取って『ほかの不動産屋に依頼したい人』におすすめ、って訳じゃないですよね。
ざっと思いつくものをまとめてみました。

  • あまり売り急いでない人
  • 管理がしっかりできる人
  • とにかく早く売りたい人(大手に持ち込み推奨)
  • 手のかからなさそうな物件
  • 超人気エリアの物件

上3つは人物像ですね。不動産屋があまり真面目に売ってくれない可能性がありますが
『そもそもそんな真剣に活動しなくても、そのうち売れてくれればいいから』と考えてる人の場合。

また、複数の不動産屋に依頼する場合について。それぞれの不動産屋への連絡や
現在の状況を管理できなければいけません。
お申し込みが入った場合や、案内がブッキングした場合などなど・・・
いろんな不動産屋が契約に向けて活動しますので臨機応変に対応してほしい所です。

また、とにかく早く売りたい人にもこちらをお勧めします。
ちょっと先ほどと矛盾になっちゃいますが。間口を広げて短期決戦!といった感覚です。
ただ、大手の不動産屋にもっていかないと相手にされないかもしれません。
そういったところは一応募集をしてもらえます。ただ、早く決まるかは運次第です。

きちんと不動産屋と話をして、適正価格で売り出すことが大事です。

下2つは物件像。言い方が悪いですが、一般媒介ともなると本腰を入れずらいのが本音です。
なので一般媒介なのに『見栄え良くするために月1回は土地の草刈りをして』とか言われると
げんなりしてしまいます。たくさん不動産業者が仲介に入っているならなおの事。

ただ例外はあって、超人気物件の場合。これは競わせた方がよさそうです。
おそらく査定の段階で買い取りを申し込まれたり、『ぜひとも専属でやらせてくれ』など
言われるかもしれません。面倒ならそれでいいですが、競わせる価値はこの辺にあると思います

ちなみに基本的にはいろんな不動産業者様が介入し、不動産を売却するシステムになっているのです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。

専任媒介契約

3つの契約の中で一番バランスのいい契約だと個人的に思います。
感覚的には『一般か専任か』という風に、ここで線引きされていると感じます。

他の不動産屋が介入できないので、これと専属専任媒介契約はあまりくいっぱぐれがありません。
もちろん期限内に成約できればの話ですが。
不動産屋さんは最低でもここで契約してほしい所でしょう。

専任媒介契約のメリット・デメリット

メリット・デメリットを語る前に一言

迷ったら専任媒介契約にしよう!!(今回一番言いたかったこと)

では独り言はおいといてメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット
  • 不動産屋さんのモチベーションが違う
  • 管理が楽
  • 自分でお客を探せる(?)

上2つはちょうど一般媒介のデメリットを解消したものです。
不動産屋がやる気になればそれだけ営業活動に力を入れてくれます。
実は不動産業界、こと仲介業務に関しては物件は誰にでも紹介していいことになっています。
ちょっとわかりづらいので図を描いてみました。(伝わるといいなぁ)

まず『不動産市場』という大きい箱があります。基本は自社で預かった物件はこの『不動産市場』
へ登録します。(不動産市場はレインズの事を指します。気になる方はググってみよう!)
その箱の中の物件は、基本どの業者が売却しても大丈夫です。

売却する際には箱の中に入れた業者に連絡して、紹介させてもらいます。
図では仲介業者Aが媒介している土地Aを、仲介業者Dがお客様に紹介しようとしています。

ここで先ほどでてきた”成功報酬”の話。覚えてますでしょうか?
不動産仲介は成立して初めて報酬がもらえます。仮に業者Dがお客様に紹介の末、成約すると
そもそも箱に入れた業者Aは売主から、業者Dは買主から、それぞれ仲介手数料をもらいます。

メリットに戻ってお話ししてみましょう。例えば専任媒介契約だった場合
誰が決めても業者Aは報酬がもらえます。
しかしこれが一般媒介の場合、売主サイドに複数の業者がいます。

そして決めた業者が全て報酬を受け取れます。
購入側は別の業者が決める場合、問い合わせは媒介を受けている
売主サイドの複数の業者のいずれかの業者へと行います。

もし購入側の業者が運悪く自社ではない別の業者へ問い合わせをして
そのまま契約に至ったら・・・報酬は0です。
そういった関係から、専任媒介契約は一定の安心感も与えられます。

もう一つのメリット”自分でお客を探せる”には?をつけておきました。

理由は専属専任媒介契約との違いはここなので、メリットになるはずなのですが
契約の安全性という観点からおススメは出来ないからです
しっかりプロに任せたほうが良いということですね。仲介料は高いですが
それに見合う価値はあると思ってます。

デメリット

専任媒介契約はデメリットが少ない気がします。ちょうど一般と専属の間の契約なので
両者のいいとこどりをしています。しかし違う面もあるので
強いて言えばそこがデメリットですよね。

  • 他の不動産屋さんに頼めない
  • たまに『専属じゃないならいいや』と乗り気じゃない不動産屋が…
  • いつの間にか期限が切れている

1つ目はまぁ良いでしょう。散々触れてきましたからね。これには長短があります。
2つ目はあくまで聞いた話です。専属じゃないなら…って、ぜいたくな業者ですねw
個人的には、この専任を勧めてくれる業者は良心的だと思います。

この専任契約では『売主が自分でお客を見つけてくる』=”報酬0”というリスクが消えません。
そこを良しとして勧めていますので、感じ良いんですけど僕だけでしょうか(;^ω^)
まぁ、先にも出てたように、契約関係は不動産屋にしっかりやってもらった方が良いですが。

3つめは気づかないうちに期限が切れるという事。

基本的に自動更新ではない(無効になります)ので、面倒でも更新しなければいけません。
不動産屋がしっかり管理ができているなら催促してくれますが、しっかりしてない不動産屋では
なあなあで済ませる事もなくはないです。そういうところだと特に気を付けなくても
良い気もしますが、絶対トラブルを避けたい!という方は注意しましょう。

こんな人、こんな物件におススメ
  • とりあえず迷っている人(一般か専任か)
  • 管理が苦手な人
  • ほぼすべての物件

上2つは人物像ですね。正直、迷っているならこれにしてしまえと思います
基本1つの不動産屋からしか連絡が来ません。なので管理も不動産屋に丸投げです。
物件に関しても大体全て任せて大丈夫でしょう。

1つ注意点。
先ほど一般媒介の項目で

”はずれの不動産屋に当ってもリカバリーできる”

と書いてあったのを覚えていますか?

一般媒介なら満足に仕事をしてもらえないなら他に頼めばいいですが
専任は他の不動産屋に依頼することはできません。ではどうするか?
最初にその不動産屋の実力ややる気が分からないときは”媒介契約の期間を短くする

これをお勧めします。そうすれば短期の機会損失で済みます。具体的には
最初だけ1ヶ月にするとかですね。くれぐれも5日とかまで短くしないでください。
絶対面倒くさがられますからw 僕なら嫌です。
余談ですが、1ヶ月なら、よっぽどいい物件じゃないと売却できません。
そのことも覚えておくといいでしょう。

ちなみに、メリットの一つとして顔が広い人も書こうとしました。
それだと自分で購入者を見つけられて、手数料分がお得ですもんね。
ただ先にも書いたように、不動産を介さないのが私的にはメリットにならないので
ここでは割愛させていただきます。

専属専任媒介契約

一番責任と縛りが重い契約です。
売主が直接契約するのも禁止』とあるのが最大の特徴ですかね。
もう何が何でもウチを通して契約してね!ってことでしょうね。

ちなみに”直接契約”がダメなのであって、購入客を見つけてくるのは良いそうです。
契約をする際には仲介業者に間に入ってもらわないといけません。
厳密には、仲介に入れなくても契約できるそうですが報酬額と同じ違約金を払わないといけません。

どうせなら仲介してもらった方がいいんじゃないでしょうか。
まぁ、契約書を作ってもらったり、買主側がローン組めなかったりするので
間には入れといたほうが良いでしょうが。

専属専任媒介契約のメリット・デメリット

一番縛りが強いこの契約。私はあまり使わないですが。
まぁちょっと訳アリな案件なら使いますね。詳しくはいつか別の記事で!!

メリット
  • 不動産屋がこの上なくやる気になる。

これに尽きるでしょう。不動産業者が任される責任感が違いますね。
積極的に販売活動を行ってくれるでしょう。
また、売主への報告も頻度を増すので、状況が伝わりやすいです。

デメリット
  • 不動産屋の力量に大きく左右される。

専任媒介契約も同じですが、他の不動産屋に頼めないので、売れるかどうかは
頼んだ不動産屋の実力次第になります。
専任と同じく短い期間の犠牲を払ってお願いしてみるか
地元で大手のド安定なところに行ってもいいでしょう。

ちょっとデメリットとは違うのですが、私も以前、専属専任媒介契約を交わしたことがあります。
かなり大きい土地でそれこそ苦労したのですが、報告の度に『案内数0件です。』って
書くのも辛かったですね。。。まぁそんなポンポン見に来るタイプの物件でも無かったですし
売主にも説明はしたんですけど。。。心が痛かった思い出です。。。

こんな人、こんな物件におススメ
  • きっちり活動してほしい人
  • はやく売却したい人

注意しておきますが、専属じゃないからと言ってきっちり仕事をしない訳ではありませんよ
ただ不動産業者も多くの案件を抱えていることが多く、優先順位を付けられます。
はやく売却したい方も、自分の意思(早く売りたいとか高く売りたいとか)を伝えて
売却活動に励んでもらいましょう。

まとめ

ここまで熱弁しておいてこんなことを話すのも気が引けるのですが
不動産を売却するのにおいて、媒介契約の種類よりも大切なことがあります。

それは”しっかり不動産屋にヒアリングさせて、売却プランを練ってもらう事

一般にしても専属にしても費用は基本かかりません。不動産屋のモチベーションを
左右する問題ってだけな気がします。

いくら専属で契約しても、全然売れる見込みのないものだとやる気は起きません。
逆に一般でもすぐ売れそうだったらちょっとだけやる気になるかもしれませんね。
ですので、しっかりその土地と市場に精通している不動産屋から適切なアドバイスを
もらえれば売却への道はよいものになるでしょうね。

終始『売却』に関するお話となってしまいましたね。
『購入』についても似たような感じです。
他の不動産屋に依頼できない、ぐらいしか論点がでないですが。
多くは『買主を逃がさないため』にするので、契約と同時に行いますかね。
これは不動産業界にある『抜き』という行為を防止するためなのですが、その話はまた次回。

お読みいただきありがとうございました。

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